理学部物語「コラム」原稿(2011.11 作成)

コラム  青葉山の楽しみ方

 

仙台に移ってから約10年になる。それまでは、東京に45年暮らしていたので、いまだに、どのテレビのチャンネルが東京のどのチャンネルに対応するか良く分かっていない。その理由は2つあって、一つは仙台に移ったときに一緒に来た大学院生がテレビのチューナーを手動で調整し、東京と同じチャンネルにしてくれたこと(固い頭には助かった)、もう一つは、わかりかけたときに地デジ化があり、再びチャンネルの番号が変わってしまったことである。いまだにぼんやりテレビを見ている。

仙台に来て毎年思うのは、「夏がすばらしいこと」である。東京、名古屋、大阪が毎日35度の猛暑日であっても日中は30度ぐらい、夕方になると涼しい風が吹いて来る。夕方が涼しいと、日中が暑くてもごきげんである。とくに理学部のある青葉山は、緑に囲まれているので初夏から夏にかけては最高で、よく他の人に「リゾート地で研究している」と吹聴している。窓からは蝉の声、本当に気持ち良い風が入ってくる。涼しいうちに大学にきて、午後昼寝をするのが極楽である。外国からの先生を1ヵ月ぐらいお呼びするときも、この季節にしている。天気が良いと、蔵王や山寺に足を延ばす。

仙台の昼と夜の温度差は、野菜を育てるにも最適である。夜間気温が高いと、野菜が呼吸しエネルギーを使い、味が落ちる。昼間光合成した養分を夜ため込むことで、健康的でおいしい野菜がとれる。その意味では、お隣の山形県は盆地のため昼と夜の気温差がより大きく理想的な地形をもつ。春から秋にかけて、トラックで「山形さん」と呼ばれる多くの農家が毎朝、関山峠(せきやまとうげ、国道48号線)を越えて住宅地に野菜を売りに来る。とくに夏のスイカは絶品である。尾花沢スイカと呼ばれるこのスイカは、全国的なブランド品でもあるが、その日の朝収穫したスイカは甘く、みずみずしい。ところが枝豆やトウモロコシになると「山形さん」の鮮度でも満足できない。「お湯を沸かしてから収穫せよ」、と教えられるように「取り立ての味」が勝負。こうなると自分で作るしかない。というわけで庭に菜園を作り、夏の夕方に収穫、ビールとともに涼しい夕べを満喫している。

理学部から七つ森方面を望む。20045月撮影。左は宮城教育大。

 

季節が少し前に戻るが、仙台は4月から5月にかけて、若干乾いた季節になる。とくに雨が降った後、高気圧が通過する雲ひとつない快晴の朝は別世界の爽やかさである。紫外線が強く、芽吹いた若葉が紫外線で蛍光し、青葉山は「光り輝く山」になる。こういう日は、春に1日、秋に1日ぐらいしかなく、私は「絵葉書の日」と呼び、チャンスとばかりデジカメで写真を取りまくっている。そういう日は、授業を休講にして(実行してはいない)山を散策したいぐらいである。青葉山には、1年2年を過ごす川内キャンパスから青葉山までの遊歩道(通学で利用する人も多い)や、宮城教育大(谷を越えたところにある大学)から三居沢(日本最初の水力発電所、見学可)までの散策道、また仙台の西方面に抜ける青葉台への山道などがある。さらに大学の植物園を通るコースもある。まさに「ハイキングコースに囲まれたキャンパス」なのである。青葉山の周りにも、太白山(三角形の山、新幹線からも見える)、番山(ばんざん)や権現森山(ごんげんのもりやま)など、300mぐらいの気軽なコースがあり、23時間で楽しめる。おにぎりでも持って、友達と素晴らしい季節を満喫してもらいたい。

私は、まだ初心者なのでこの程度で十分自然を満喫するのであるが、先輩の教授になるともっと「深い楽しみ方」があるようである。それが初夏の山菜と秋のキノコ狩りである。究極の奥義は、「天然の長芋ほり」らしい。取れる場所や、キノコの知識などは門外不出であり、自然を守る意味でも誰もができるものでもないようである。というわけで、その季節になると、先輩の教授が研究室に持ってきてくれる山菜のご相伴にあずかることにあいなる。おひたしに良し、天ぷらに良し、湯気香るご飯によく合う。研究室には、一升炊きの電気釜があり、研究室の宴会で活躍している。

仙台の秋は、比較的早く訪れ9月ぐらいである。もっとも紅葉は11月中旬ぐらいであろうか、温かい日と、肌寒い日が繰り返し秋の彩りを深める。この時期重要なのが、米、メシである。宮城県はお米の国、「ヒトメボレ」の王国である。地産地消を実行し、価格も安く、大変うまい。大学に入学し下宿される方も多いと思うが、ご飯だけは自分で炊くことをお勧めしたい。おいしいご飯を食べたいのであれば、まずは水加減を考えればよい。あとは炊飯器にお任せなので、毎日の生活に小さな幸せを見つけることができる。

うまいメシの上に何をのせるかをお話したいところだが、紙面が尽きた。実は大事な魚の話をしていない。授業の時にでもこの話の続きをしたいと思っている。

齋藤 理一郎 (さいとう りいちろう Riichiro Saito

物理学科・教授。専門は固体物理学。カーボンナノチューブの理論的研究。趣味は、家庭菜園、卓球など。美味しいものを食べるために、いろいろな外国語を怪しげに話す。理学部の自修会の卓球大会を主催しているが、一度も優勝したことがない。1958年東京都生まれ。ホームページは、

http://flex.phys.tohoku.ac.jp/japanese/index.html また

http://flex.phys.tohoku.ac.jp/japanese/lab/yuuhi.html にデジカメで撮影した、青葉山の四季の写真がある。