ファイルを操作するEmacsのコマンドには，たいていファイル名の指定が必要 です(セーブとリバートでは，バッファは使用するファイル名を知っているので 例外です)．ファイル名は，ミニバッファを使って指定します (see section ミニバッファ)．長いファイル名を指定するには，入力補完機能が便利で す．See section 入力補完機能.
RETキーだけを入力して空の引数を入力したときは， 常にデフォルトファイル名が使われます．デフォルトファイル名はカレン トバッファに読み込まれているファイルの名前で，Emacsのファイルコマンドを 使ってそのファイルを操作するのが簡単になります．
バッファにはそれぞれデフォルトディレクトリがあります．通常はそのバッファ
に読み込まれているファイルのディレクトリと同じです．Emacsがファイル名を
読みとる場合に，ディレクトリの指定がないときには，デフォルトディレクトリ
が使われます．スラッシュで始まらない相対的指定をしたときは，デフォルトディ
レクトリからの相対的なものと解釈されます．デフォルトディレクトリは，変数
default-directoryに保存され，それぞれのバッファに個別の値となりま
す．
たとえば，デフォルトファイル名が，`/u/rms/gnu/gnu.tasks'であれば， デフォルトディレクトリは，`/u/rms/gnu/'です．ディレクトリを指定せず に`foo'だけを入力したときには，`/u/rms/gnu/foo'を意味します． `../.login'は，`/u/rms/.login'を，`new/foo'はファイル名 `/u/rms/gnu/new/foo'をそれぞれ意味します．
M-x pwdコマンドはカレントバッファのデフォルトディレクトリを表示
し，コマンドM-x cdはそれを(ミニバッファを使って読みとられる値に)設
定します．バッファのデフォルトディレクトリが変更されるのは，cdコ
マンドが使われたときだけです．ファイルを読み込んだバッファのデフォルトディ
レクトリはそのディレクトリに初期設定されます．バッファがC-x bを使っ
て作成された場合は，デフォルトディレクトリはその時点でのカレントバッファ
のものと同じになります．
ファイル名を読みとるためにミニバッファが起動されたときは，実際にはデフォ
ルトディレクトリがミニバッファに現われます．これには2つの目的があります．
1つはデフォルトが何であるかを示すことです．これにより相対的ファイル名を
入力することができ，その意味が確実にわかります．もう1つは，デフォルトを
編集して別のディレクトリの指定ができることです．デフォルトディレクトリの
挿入は，変数insert-default-directoryをnilにすると働きませ
ん．
テキストの一部としてのデフォルトディレクトリ名を無視して，絶対ファイル 名を入力するのは全く問題ありません．ミニバッファの内容はおかしなものに見 えますが，実際はそうではありません．これに関しては，See section ファイル名用のミニバッファ.
ファイル名中の`$'は，環境変数に展開するのに使われます．たとえば， `FOO'という名前の環境変数を`setenv FOO rms/hacks'というシェル コマンドで設定したなら，`/u/rms/hacks/test.c'を `/u/$FOO/test.c'または`/u/${FOO}/test.c'というように表すこと ができます．環境変数の名前には，すべての英数字が使えます．その名前を `$'に続けるか，`$'後ろにかっこで括って表します．ただし， `setenv'がEmacsに影響を与えることができるのは，Emacsを起動する前に 実行したときだけです．
ファイル名に`$'を含むファイルにアクセスするためには，`$$'と
タイプしてください．単独の`$'を環境変数に置換するときに，このペアも
`$'に変換されます．この置換を行なうLisp関数は
substitute-in-file-nameといいます．この置換は，ミニバッファを用い
て読みとったファイル名に対してだけ行なわれます．