科学の言葉 - プレゼンの技法 -

Last modified: Mon Jan 5 16:37:08 JST 2015

科学を伝えることの難しさを、年を取る毎に感じています。 いくつか思い立った言葉を、記録しました。自分への戒めにしか 過ぎません。

  1. 大小は、比較が必要。

    科学の世界は、形容詞はあまり意味をなしません。評価の基準が 日常生活とは異るからです。『XはYに比べて小さい』ならok です。

  2. 講演は質疑応答が命。

    自分の講演が終わって、質疑応答があやふやなひとが多いですが、 聴衆を満足させるかどうか(評価)は最後の質疑応答であると思います。ここの 掛け合いは緊張感をもって臨む必要があります。

  3. 質問の答えは、yes/no が先。

    質問は疑問文です。質問の応えは、この疑問文の答 が先で、理由が先であってはなりません。場合によって は、理由は不要です。みんなが『それは何故?』とい う雰囲気を作ります。

  4. 質問の答えは、短く直接的。

    質問時間が5分なら、一つの答えの時間は20秒以下。2 つの文 で構成します。『そうです(ちがいます)。それは、XX だからです。』 質問の答えは完璧であるより、質問者のわからないところを解消することが 最大の目的です。自分が話したいことは、抑えます。 5 分間で10質問をとれば合格。質問者が待っているのに、 延々と自説を展開するのはマナー違反。

  5. 質問者によって差をつけない。

    質問は、いろいろなレベルがあります。大先生からの質問には 意気込んで応えて、若者の質問には鼻で笑ったような答え方をするのは 大多数の聴衆が愉快と思いません。むしろ逆に対応すべきです。 大先生には、講演後『あのときはうまく答えられなかったが.』と 直接お話にいった方が好印象です。

  6. イントロで実力がわかる。

    既知の事実を、詩人のように短い文章で説明し、 知っている人には『うまい説明だ』と感心させ、知らない人には『なるほど』 と思わせることが必要。『皆さんはご存じでしょうが』は最低。知らない人を 敵にするだけ。

  7. 手順が極めて重要。

    話す順番は、理解度に決定的な差をつける。聴衆を引き付ける力があれば、 複雑に枝分かれした筋立てが可能かも知れないが、話が戻らなく、先の話を いれて話さないことが重要。『さっきお話ししましたが』『後で話しますが』 は、プロは決して使わない。

  8. 読めない字、長すぎる文。

    プレゼンで、読めないぐらい小さい文字、読みきれ ないぐらい長文は無意味どころか減点。重要な言葉は口で話し、 口では話しきれないところを字にすると有効。(頭の回転の良い人は 話を聞きながら適当に理解を深めてくれる。)

  9. 自分の驚きが、人の驚き。

    自分が研究をする上で驚いたことを、忠実にプレゼンで再現できたら 聴衆も同じ雰囲気にすることができる。用意周到な準備が必要。

  10. 言葉の定義は、さりげなく美しく。

    言葉がわからなければ、内容は伝わりません。自分が勉強して 知った言葉を聴衆が知っていると思うのは間違い。言葉の定義を プレゼンのなかに美しく織り込みます。

  11. 言葉の定義は説明が先、議論は説明が後。

    話で使う言葉の定義は、説明を先にして『このことを XX と呼びます。』 というとわかりやすい。『XX です。ここで XX とは』より自然。一方 驚きの結果を言う場合には、話の焦点を明確にするために、結論を先に いいます。理由をあとに言う方が集中します。『これは XX であることを 示しています。そのことは驚きですが次のように考えることができます。』

  12. こうなる、そうなるは、どうにもならない。

    『そうなる』ということは、聴衆の思考を停止させ、 興味を失う要因になります。聴衆が、『そうなるはずだ』と 思わせることが必要。そこであえて『そうなる』といわない と、聴衆は自分が発見した気持になるはずです。興味を増加します。

  13. 笑いは集中力の持続剤。

    まじめに60分講演させて、集中して聞くことが出来るのは、 最初からおおかたわかっている人です。論理が難しくなって、聴衆が いろいろ考えはじめたら、聞く耳が閉じてきます。こういう状況で 聴衆の思考を停止させ、集中力を維持させるために、笑いを入れるのは 有効です。内容はわからなくても、一緒に笑えたら楽しいですね。

  14. 前回の質問は今回のネタ。

    同じ話を2, 3 回することは少くないです。発表練習などもありますね。 発表の時にでた質問で、『理解のための質問』に分類される質問は、次回 以降、自問自答の形でだすと、わかりやすくなります。想定される質問 のストックをためると、質疑応答がスムーズになります。

  15. 司会は聴衆の代表、講演者の味方。

    司会は、聴衆が捉えきれなかった部分を適切に指摘し、理解を助ける 質問をします。講演者の味方です。この答えは聴衆に向かってすべきで、 たとえ司会の人が専門の人でも、わかりやすく短く適切に応えるべきだと思います。 『司会者は知っているはずなのに』と不満気にだらだら専門的に応えるのは自滅 パターンです。

  16. つきつめると『信じろ』はだめ。

    話を良く聞くと、『私の言うことを信じてください』 になる文章は科学的でなく、そういう論理の中に誤りが 多いのが事実です。講演者が誤解している場合があるの で、こういう点を質問で攻めます。

  17. 良いプレゼンには、質問が発生しない。

    逆説的ですが、良いプレゼンは論理に飛躍がなく、 皆が満足して理解します。したがって、切口となる質問 がでない場合が多いです。誰かが質問して、だんだん質 問が増えていくような発表は、良いプレゼンであると思 います。質問の切口を講演者が意図的に作るのは、戦略 的です。(例: 驚きの結果に(時間の節約のため)正 確な理由を伏せる。)。質問の切口をつくってあげるのは 若者と、実力者のすべきことです。

  18. まとめで、新しいことを話さない。

    なかじめ、結論のまとめでは、補足的に話したいこ とはいっぱいあるかも知れませんが、新しいことを話し てはいけないと思います。まとめは、聴衆が確認する 機会であって、新しいことを話せば確認を乱すことになります。

  19. 将来の展望より、現在の疑問。

    レビューなどで、将来の展望を話す人は多いですが 聴衆の緊張を散漫にするだけであると思います。それよ り、『現在良くわかっていないこと』を最後に持ってくれば 緊張が高まり、質問の切口になります。

  20. 見えない縦軸横軸。

    グラフは、話がわからないときの理解の要です。 まえおきを短く、縦軸横軸から説明します。 グラフの状況を説明し、グラフの主張点を説明します。 縦軸横軸の説明なし、数値が読めないぐらい小さい文字は厳禁。 『縮小したら見えなくなった』という言訳は墓穴。

  21. 比較する2つの図のスケールが不一致。

    2 つのグラフを比較するとき、例えば縦軸の縮尺(0-100 と 0-70など) が 違うのは、誤解をまねきます。『スケールをソフトウエアが自動的に決めたから』 といういいわけは存在しません。

  22. アニメーションの功罪。

    アニメーション機能は、労多くして理解の向上になりませんん。 聴衆の感心を引き付ける効果はあります。ページを戻ったりするときは アニメーションが多いと不便です。定義したい言葉を説明してから 見せるは効果的です。

  23. ビデオの効果

    実験のデモや装置の説明でビデオは聞く人の注目を集めるのに、 大変有効です。短め(30秒)にして、連続して繰り返すと見落としがありません。 ビデオの中に人物を入れるのは、興味を増加する効果があります。 1行ぐらいの説明を入れても良いですね。

  24. イントロの流れは真っ直ぐ動機につながるべし。

    イントロは、すべてこれから話す内容とつながっています。 非常に大きな世界から、問題の焦点にクローズアップするといいです。 話したいことを漫然と話すイントロは、動機につながりませんん。

  25. 話の出だしが、すべてを決める。

    小説もそうですが、話の出だしで実力がわかります。 私の部屋に入ってくる学生の、最初の2, 3 歩でだいたい 程度がわかります。『XXに関しましてYY大学のZZ が発表します』 は最低の出だしです。工夫が必要です。

  26. 聴衆が集まってから本題。

    セッションの最初の講演だと聴衆の集まりが悪い場合があります。 集まりが悪い場合には本題の理解に本質的でない、ごく基本的なことを 話すと良いと思います。笑いが入れると、遅れてきた人も自然と話に 入りたいと思います。

  27. ご当地ものを入れると、盛り上がる。

    いろいろなところに呼ばれてお話しするときには、話の途中で 呼ばれた先の映像などを見せて、今話している内容と三題噺のように つなげます。出張の途中で映像をとって使うのは皆さんも楽しめます。 主催者に対する配慮も必要であると思います。

  28. 司会者へのお礼の言い方。

    会議で、"Thank you, Mr. Chairman." ということを 良く聞きますが、言われた方は『なおざり』と思わせるだけです。 司会の人を知らなくても、名前ぐらい覚えて具体的に お礼を言うのが良いです。『XX 先生、身に余る紹介に感謝申し上げます。』 といえば、司会の人の話を聞いていたなと聴衆も感じます。

  29. 笑いは、図より想像の方がインパクトあり。

    笑いは、図で笑わせるのは初級です。聴衆の中に、イメージをわかせ 笑わせるのは高等戦術です。話術の力が必要です。機転が効いた 攻めも意外性があります。このためには、今何を話しているかはバックグラウンドで 考え、頭の別の部分でで聴衆の状況を把握します。

  30. 時間が足りなくなったときの、スライドの捨て方。

    後半のスライドは時間が無くなってきた時には、捨てないといけません。 ただしこの時にも、サブリミナル(非常に短い時間の映像による記憶)効果 がでるように、後半のスライドは大きな文字と、大きな図で0.5 秒ぐらいで 回すと良いです。10 枚飛ばしても5秒しかかかりません。0.1 秒だと 映像としての記憶はのこりません。0.5 秒でキーワードをポンポンと言えたら 達人の領域です。

  31. 講演時間を確認するタイミング。

    時計を持たず、司会者がいらいらしても平気で話している人がいますが、 聴衆は既に完全に引いています。全体で何枚、ここまでで何分、などあらかじめ 予定をみて、区切りの時間の確認をします。ちらっと時計を見るのは、 『この人は時間を考えて話している』と好印象です。

  32. 最後の1分の話し方。

    最後の 1 分。60 秒。時間が足りなければ、今後の流れをコンパクトにまとめます。 時間がピッタリの場合には、時計を見ながら美しくまとめします。みんなが納得して 鐘がなる 1 秒前に終われば、『ホー』という称賛がでます。余っている場合には、 さっさとやめて質問の時間を確保しましょう。蛇足は話を散漫にします。

  33. 時間延長をする場合のテクニック。

    どうしても、1, 2 分延長したい場合があります。その場合にはまず司会者に 許可をもらいます。許可をもらったら、詳細な話はやめて最後の1分間の話モード に変えるべきです。結論のページは見せて終りにします。共同研究者の紹介を 延長モードでするのは失礼です。

  34. 質問がなかったら、あっさり帰ろう。

    質問が少く、話が続かない場合、発表者が話したいことを延々話していますが あまり印象よくありません。実は、他にも質問する人がいるのに、延々話したため 質問出来なかったら不満です。質問がなかったら、ありがとうといって終りにするのが 一番です。

  35. 質問者が質問をやめたら答えもやめよう。

    質問者の意図と発表者の答えが違う場合、時間の節約のため質問者は質問を 断念します。この場合には発表者は、無理に補足しないで『講演後ご説明します』 とするのが良いと思います。質問を断念するのは発表者への配慮です。

  36. 大きな講演の前宣伝は、2, 3 人を集めるようにする。

    講演者を読んで講演会をするときには、宣伝は重要です。ただし『講演会をするから 来てください』調の案内は耳がむきません。『こういうことをわかりやすく話してくれる』 など具体的なことを書くと感心が高まります。1000 人集める場合でも、ここから 2 人、あそこから 3 人ときざんで集める努力が必要です。

  37. 審査員のいる場合の話し方。

    博士論文の審査会は学会の話し方と基本的に違います。 審査員の目を均等にみて、審査員が理解しているかの把握が必要です。 審査員が間違っている場合にでも、『説明が不十分でしたが』と一つ 引いて、審査委員が『私の勘違いだった』と感じるような説明に しなければいけません。『そんなこともわからないか』調の喧嘩腰 の話は厳禁です。

  38. 聴衆の把握の仕方。

    聴衆100人を引き付けるのは、容易ではありません。まして聴衆のレベルに 幅があるときはなおさらです。聴衆のなかで、比較的集中力をもって聞いている人を 数人サンプリングして、その人がおもしろいと感じるような話し方をすれば、 その人が回りに好影響を与えてくれます。

  39. マイクの位置の調整は重要。

    マイクをつける位置を、いい加減にしていませんか? 休み時間に、会場の反響や音量を確認し音が割れずに自然に聞こえる距離を考えてください。 スクリーンに向かって話す場合と、聴衆の方向を向いて話す場合ではマイクの向きを変える 必要があります。なるべく首を横にしないで、足を動かし体を向けてマイクの音が 均質になるように話します。鼻息がマイクに入るのは最低。

  40. レーザーポインターの動かし方。

    レーザーポインターをぐるぐる回す、つけっ放しで まぶしい、は間違った使い方です。言葉をなぞるなら、 話すスピードと一緒にアンダーラインの位置にそって移 動します。文字を一度なぞったらレーザーポインターの スイッチを切ります。手を伸ばさず、肘を固定してポイ ンタを軽く握り手首の移動で操作します。プロは、手首 を動かさず指を動かすだけで、グラフの線の上などを正 確におうことができます。

  41. スクリーンに向かってどのように立つか?

    右ききならスクリーンの向かって右端に立ち、 右手でレーザポインターを使います。あまりスクリーンの際に 立つとポインターが指しにくいです。あまり前に立ちますと 会場の右側の人が発表者の影になって見えません。 スクリーンの端と会場の右端を結ぶ線の外側にたちます。 司会者の顔が見える位置にたちます。左側に立つ場合には 左手でポインターを持つと自然です。

  42. スライドの文字の大きさは会場の大きさ。

    スライドの文字は会場(スクリーン)の大きさで きまります。すべての人が視力1.5 というわけではありません。 視力0.7 ぐらいの人でも十分判別出来る文字が必要です。 特に年輩の聴衆がいるときには、小さい文字は厳禁です。

  43. スライドのフォントは講演者の意思。

    フォントの使い方は、印象を左右します。 またフォントの選択は、同じ大きさでも見やすさを変えます。 つまりどういうフォントを選ぶかは講演者の意思であるのです。 親しみやすい、読みやすいフォントを使いたいですね。 フォントと背景のコントラストもとても重要です。

  44. 使ったスライドは、惜し気もなくあげる。

    発表が複雑な場合には、スライドが欲しいなあと思う場合が多いです。 発表の時に、欲しい人に差し上げますというと、講演後に何人かきます。 これは自分の発表を別の人が代りにしてくれるのですから、惜し気もなく あげたいです。未発表のデータで重要なものは、本来発表すべきでないです。

  45. スライド中のグラフは一目瞭然であるべし。

    一つのグラフは、一つのメッセージに限ります。 たくさんのグラフを複雑に混ぜたもの(特に 3D) のものを 見せるには、2D の絵で十分概念を伝えた上で 3D の図を見せないと 瞬間的にはわかりません。最初のタイトルなどに説明なしに3D の 絵などをのせて Deja View (既に見たことがある映像)効果を狙うのも 作戦です。

  46. スライドの中の矢印は、多用厳禁。

    矢印を使っている漫画や、新聞の図はありません。説明の字が適切な位置に、適切な 大きさであれば、分かります。矢印は図を煩雑にします。矢印を目で追うのはつかれます。 矢印の代りにポインター(指示棒)を巧みに使いましょう。

  47. スライドの中の式はそのページのみ利用。

    前ページの式からの延長で話が分かる人は、かなりそういう話し方が分かっている人です。一般向には適用できません。前ページの式を使いたい場合には、コピーをしてそのページに も示すのが適当です。前のページにいったり戻ったりするのは、見る人には不愉快。

  48. 長い式のつなげ方。

    長い式は、プレゼンにはむきません。どうしても長い式を出したい場合には、 式の各項の意味が分かるようにしたいですね。数行にわたっても良いから大きな font を使いたいです。長い式はやめるのが一番です。

  49. 言葉よりイラスト。

    口でいいにくいことを、イラストを使って説明すると、口下手でも良く分かってくれます。イラストを多用するのはプレゼンでは大変有効です。すべて言葉で説明出来るなら、言葉 のプロである落語家になれます。この場合には、表情やしぐさをイラストがわりにします。

  50. 比較の言葉より、不等式。

    話の中で、何々が大きくなると、何々が小さくなって、何々が大きくなる、風の話は 一見すると話す方は簡単ですが、聞く方は理解するのに何ステップか頭の中で考える 必要があります。何々と何々が反比例するので、といってから不等式の関係を言うのが 分かりやすい。

  51. 比較は表で行う。

    八百屋さんのようにたくさんのデータを並べて比較をされると、聴衆は混乱し 何も把握できません。3つ以上の比較は表を作り、さらにその表を一つ一つ 説明しないと把握できません。

  52. グラフは、聴衆に読ませる。

    グラフから読み取ることを、話し手が説明するのは常道ですが、少し時間をおいて 、となりますとこういうプロットが見たくなります。この図は横軸縦軸がマルマルで 直線は何々のデータを示しています。などと説明している間に、聴衆が何が言いたいか を分かるようにした後で、とどめに説明すれば。分かりやすいと感じます。

  53. 話の感動は、驚きから。

    おもしろい話とは、驚きがあるとおもいます。驚くためには、驚かない普通の 概念とはどういうものかを、少し詳しく説明した後で聴衆の大部分が共通の 認識を持った後で、実は、と驚きの結果をさりげなくしめします。そこで聴衆に 驚きの反応があれば、興味を引き付けることができます。

  54. 脱線の仕方は、巧妙に軽く。

    脱線というのは、話の大きな筋を一本道に話すより、適当な休息をあたえ 実は本題に興味を集中させる効果があります。たとえ10分講演であっても 巧みに脱線することが出来る人がいます。また脱線したまま本線に戻らず 支離滅裂な話もあります。脱線で、想像の枠を広げ、軽く本線に戻れるのが 巧みな話術です。

  55. 途中の質問は、救いの手。

    話に夢中になっているときには、聴衆を取り残すときがあります。 そういうときの途中の質問はいやがらず、冷静に答えたいですね。 むしろ話を分かりやすくしてくれる救いの手と思って感謝する 余裕が欲しいところです。

  56. パワーポイントのファイルの縮小法

    パワーポイントのファイルが200MB もあって立ち上 がるのにも数分かかるなんていうのもあります。図の解 像度を96point に統一(設定可能、サイズの縮小で検索) すればファイルの大きさをかなり小さくできます。また ハイパーリンクを使って各章を別のファイルに入れると 軽快な動作になります。PCのメモリーが小さい場合には 特に注意が必要です。

  57. やっかいな質問のさばき方。

    やっかいな質問にはいろいろパターンがあります。 複雑すぎて答えにくい場合には、『立込んでいるので、 差し支えなければあとで個別に。』と即答をさけます。 明らかに本題からはずれた質問の場合には、『新たな視 点であると思う。』と述べて、直接対決しない。『間違っ ている。』という直接攻撃の質問の場合には、『前提や 限定的な条件の場合にのみ成り立つので、ご指摘の場合 には該当するか分からない』とひとまず、みずかけ論にならないよう にします。

  58. レビューの目次は4つまで。

    招待講演で、自分の研究のすべてを話したい人がいるが それはやはり無理。そうかといって、1つのテーマだけだと 切口が分からない。2-3 個ぐらいのテーマを軽く話すのが 興味がでる。多くの人の興味を得るにも複数のテーマが効果的。

  59. 聴衆の理解が、分野の発展。

    学会会場で、司会1人だけが理解できて、 その他の聴衆は全滅では何で話しているのか分からな い。会場にいる人がどんなことでも一つ分かれば、その分野が発展 すると考えるべき。

  60. キーワードを残す詩人になる。

    発表の後で、『丸々さんの話はどうだった?』と聞かれたときすぐには 説明でき無いものだとおもいます。『おもしろかった』といわれるのは よいですが、情報がわかりません。最もポイントとなるキーワードを 残すとよいです。詩人の言葉は、キーワードで凝縮しています。

  61. 会場を読む。照明の調整。

    誰がどこに座っているか? だれが寝ているか? 誰が反応しているか? だれが分からそうな顔をしているか会場を読むこが必要です。このため 人の顔が見えないように照明を著しく暗くすると、暗闇に向かって話すようで むずかしいです。顔が見えるぐらいに明るくしてもらいます。知らない人の 会場の場合には、発表の前に雑談をして、聴衆の希望をさりげなく聞くのがテク。

  62. アニメーションはデモで使う。

    アニメーションは、聴衆の注目を集めてからはじめないと、見落とした人は 有効ではありません。ここでデモとして、何々の結果を紹介します。と 間をおくのがよいです。話しながらアニメーションを使うのは、一見分かり やすいようですが効果的ではありません。図の記憶としては残らないからです。

  63. ムービーは音を使う。

    ムービーは音があると違和感がありません、音のな いムービーや、映像のない携帯電話の会話などは、一般 には違和感のあるものです。PC のスピーカーにマイクを 向け、聴衆全員に音を聞くことが出来るようにします。

  64. ビデオカメラがあるときの話し方。

    会場でビデオに撮影している場合には、カメラは発表者と、映像をそれほど 頻繁に移動するようなことができません(プロのカメラマンがいる場合には別)。 この場合には、自分の顔をスクリーンの中にいれて、話をするのがテク。重要な ポイントを話す場合には有効。この意味でスライドの背景を白にしておくのが コントラストを取りやすい。背景が黒だと光のなかの顔が白やけになる。TV 撮影の 時は、重要な話でカメラがこちらを向けたときはカメラ目線にするのが自然。

  65. スライドの著作権。

    NHK などは放映権、著作権などに非常に敏感。公共放送の場合には、 人の図は使わないようにした方が無難。Web などでフリー素材として提供しているもの も不可である。

  66. 人の仕事の引用は正確に。

    人の仕事を丁寧に入れている人の話は、多くの人の好感を呼ぶ。 これは誰の仕事と言わないまでも、文献はページまで正確に入れるのが 聞いている方も分かりやすいし、メモも取りやすい。引用の字が小さいのは効果なし。

  67. 自分の論文の引用は重要。

    自分の論文の内容だからといって、論文を引用しないひとがいますが、 自滅パターン。興味を持つ人は、その論文を読むと思います。別の論文で 引用するときに覚えておくことができます。自分の論文の引用はページまで 正確に。

  68. 共同研究者の紹介の仕方。

    多くの場合、共同研究者の紹介は話の最初と、最後が多いですが、 途中で写真で入れるのが効果的。名前だけだと知らない人はイメージが つかない。とくに欧米の人にとって日本やアジアの人の名前はなかなか 覚えられない。(日本の人が、韓国や中国の人の名前を顔を覚えるまでは 覚えきれないとの同じ)。一人一人紹介しても、覚えられないから、 話の中で主語として共同研究者の名前を入れるようにしたい。

  69. スライドの密度と消費時間のスケーリング則。

    一般にスライドの密度の多い人ほど、話が長い人が多い。これは スライドの内容をどうしてもすべて話したくなるから。スライドの密度 を非常に小さく(例えば、3行/ページ)にすれば、消費時間はあまりかかあない。

  70. 講演のテンポと理解度の調整は会場で。

    話すスピードと理解度は会場で調整するしかありません。 立て板に水で話してもついていかなければ、理解度は下がるだけ。 一息で話す時間を同じにして、一息に話す言葉を増やすのが適当です。 若い人には速く、年寄りにはゆっくり話すのがいいようです。

  71. 当意即妙の答えの出し方。

    答えを決めるのは、かなり冷静になることが必要。ユーモアを 入れるのは、冷静かつ頭の回転をあげて答える必要があります。 だいたい質問者の予想している答えを把握して答えるのが、一つのテク。 『まさしく、その通りです。』なんて少しおだてて、『それに付け加えさせて頂ければ』 と自説をさりげなく並べて、『という見方も考えられます』と少しへりくだって( 実はそれが正解の場合であっても)まとめるのが芸のうちかもしれません。 相手が一本取られたなぁと思えば正解。

  72. 批判的な質問者は最大の理解者。

    人間少しものが分かってきますと、批判的に物事を考えがち。 こういう人を敵に回すメリットはない。批判の認めるところをすなおに 認め、逆に『どう考えたら良いでしょうか?』と聞き、『重要なご指摘 ありがとうございました』としめれば、質問者の頭の中のリストは、 『この人は良い』という分類にはいります。批判をしてくれる人を大事にしてこそ 新しい発想が生まれると思います。最大の理解者を失わないように。 年をとってくると、『指摘してもよいが、まあいいか』とほっておかれることが 多いのです。それは発表者にとって益なし。

  73. 質疑で対立した場合は、質問者を勝たせよ。

    質疑でお互いの意見が対立する時は、質問者を勝たせて十分です。 もし質問者の方が間違って入れば、質問者は永遠に発表者の論文を 引用するでしょう。質問者が正しければ、引き下がったことで正しさを 認めたことになります。

  74. 問題の重要性は、簡潔さで引き立つ。

    重要な問題の結論は、簡潔なものです。簡潔であればあるほど、 聴衆の心にささります。

  75. えー、えーと、は指摘しよう。

    話し下手のひとは、えーとえーとを連発します。英語でも その類が多々あります。実は発表者が気づいていないことが多い ので、直接指摘してあげるのが親切。間接的に指摘すると悪口になる。

  76. 英語のプレゼンは、簡潔なストーリー。

    英語が得意な人は、どうしても文章が複雑で長くなりがち。 逆に短い文章の羅列は、母国語の人にとって聞き辛いが、分からない 分けではない。英語圏でない国での英語のプレゼンは、短い文章で簡潔な ストーリーにすると理解度があがる。

  77. 次のスライドに何があるかを知っているべし。

    次のスライドに移る前に、現在のスライドで『しかしながらこの仮定はうまくいきません。』というと、次に何が出てくるか興味がわきます。次のスライドを見てから、 1 秒ぐらいおいて話し始めると、準備不足が否めません。発表練習で次のスライド へのつなぎの言葉を覚えるのは、格好良い。

  78. 話がつまるスライドは、切るべし。

    発表練習して、なかなかうまく説明でき無いようなスライドは一般的に、立ち入りすぎ。 バッサリ切った方がわかりやすい。

  79. 同じことをいうのは、2度まで。

    『このことはさっき言ったな。』というのは時々戦略的に使うので OK. でも3度繰り返されると、『くどい!』という印象がする。じいさん的。

  80. PCとプロジェクターの相性をチェックするのはマナー。

    学会発表で、買ったばかりのNote PC を使うのは良くない。 プロジェクターとの相性で画面が変形したりしたとき、その対処法に 困って最悪後回しになる。講演の前に必ず動作チェックして、 うまくいかない時には代わりのPCで講演するようにしたい。

  81. 人のPCで発表は、フォントの文字化けの危惧。

    自分のPCがうまくいかないとき、また会議によっては共通のPCを使う場合がある。 この際注意したいのは、特殊なフォントの場合文字化けになる。PDF ファイルを別に準備 するのが安全。

  82. 概念の比較は、理解の女神。

    概念は分かりにくい場合が多いです。似たような概念との比較をすることで 他の概念との違いを明確にすると、理解に役に立ちます。(例: 同素体、同位体)

  83. もののたとえは、普遍的なものほど有効。

    ものを喩えるのは、理解の役にたちます。でも喩えたものを知らなければ 役に立ちません。なるべく聴衆の多くが知っているものを選ぶことが必要です。 固有名詞を使わない喩えは、ことわざになります。

  84. 例をあげると、理解が深まる。

    概念を理解できず未消化の時、2, 3 例を出すことが助け船になります。 『◯◯の場合はあてはまります。』『◯◯の場合には当てはまりません。 それは、◯◯の理由だからです。』のような説明がよいです。

  85. 難しい概念は、step 1, 2, 3 で。

    定理の証明などで、レンマ(補題)と称して予備的な証明を事前にする場合が あります。難しい概念も、その導入の前に踏み石を2,3 個用意するとわかりやすいです。 周到な準備が必要です。

  86. 何故という質問の答えを用意しておこう。

    何故? と聞かれて、明確な答えがすぐでない場合があります。 とくに 切り貼り的な情報では、自分に 何故? と問いかけて説明 できるかチェックが必要です。意外なことに簡単な場合ほど答えられないことが多いです。

  87. 講演の後に質問に行こう。

    自分の質問が、専門的だと感じたら講演の後に質問に行っても良いです。 自分の質問が、素人質問なら講演中の方が良いです。『当たり前かも 知れないから講演中には質問しませんでした』は質問者中心の考え方。

  88. 講演の後の質問の答え方は別。

    講演後の質問の答えは、他の人が理解する必要は無いから、質問者のレベルを 確かめてレベルにあわせて答えます。『授業で、◯◯習った?』とか聞いてから答えます。

  89. 後の講演より前の講演を聞くべし。

    よく自分の講演の直前に来て、講演する人がいますがこれは場違いになる場合が多い。 自分の発表の前に、自分の疑問と同じ発表があるかも知れないし、もしかしたらより 良い答えが先に出てるかもしれません。そうなったら、聴衆は発表の時間はメールでも 見る時間になります。前の発表を踏まえて自分の発表を入れるのがかっこいい。

  90. スライドでの変数は5つまで。

    一つのスライドに変数がたくさんあると、把握は困難です。 説明も大変です。いっぽう定数はいっぱいあってもそう大変でないです。 とくにベクトルやテンソルなどを成分で示すのは理解度を下げます。

  91. 変数 x を x といわない。

    電場 E を 『イー』と言うのと『電場』というのでは、ぼんやりしている 時には理解度がだいぶ違います。変数を意味で言う方がわかりやすいです。

  92. 聴衆層の感触の取り方。

    感触のとりかたは、やはりユーモアで笑いがどれくらいとれるかで とりたいです。高級な方法は、ある極限の結果を示して納得するかどうかの 表情でみます。

  93. アンケートには丁寧に答えよう。

    講演会のアンケートは、率直な意見が多いです。丁寧にみて 全体像をつかみたいです。


    以下準備中

  94. スライドを指しながら、聴衆を見る。
  95. 聴衆のターゲットは、レベル中位に。
  96. 偉い先生は、論文を読む。
  97. ポケットに入れた左手を使う。
  98. 動作の無駄は、20%の時間の節約。
  99. 靴音、鼻息、マイクのすれる音。
  100. 周りがざわざわしても、皆は聞いている。
  101. ポスター発表は、賓客がくる。
  102. ポスター発表で、多人数をさばく。
  103. 発表は、運命の扉をあける。
  104. 発表では他人を大きく誉める。
  105. 他の人の仕事は、名前で紹介する。
  106. 異る分野で話をすることは金。
  107. 研究室に訪問したときの、デスク上のプレゼン。
  108. 電車のなかでのプレゼンは究極。
  109. 英語圏でない国での、英語のプレゼン。
  110. 米国での、英語のプレゼン。
  111. プレゼン試料の整理と保存。
  112. 人のプレゼン資料を食べる。
  113. 修士の学生さんのプレゼンを盛り上げる。
  114. 若い研究者のプレゼン力をつける。
  115. 非常に難解なプレゼンを理解するためには。
  116. 3 次元の図の功罪。
  117. 理解のためのデフォルメ。
  118. 近似の有る場合の話のしめかた。
  119. 問題の発展をさりげなくだす。
  120. 実験家のための理論、理論家のための実験。
  121. 専門(おたく)の質問の逃げ方。
  122. 就職面接のプレゼン、椅子に座るまでに10の注意。

    面接をするときのノックから、椅子に座るまでの動 作を見ているだけで実はだいたいのことが分かります。 自然に、礼儀正しく、心を配って行動できるか10のポイ ントを考えてみてください。多くの学生は、研究内容の 資料を作るのに時間をかけますが、実は椅子にすわるま でを考えた方が1次面接突破のカギ。緊張して、何を話 しているか分からないのなら、おひきとり頂くしかない。 練習あるのみ。指導教員に見てもらうのが良い。

  123. 課長面接のプレゼン、直接の部下候補として見ている。

    1 次面接が突破したら、人事のひとと採用予定の課 長さんクラスとの面接。課長さんクラスは若者と直接接 しているので、礼儀などは多少目をつむるが、会話が出 来ない、こちらの言うことを十分理解できないことには、 大変敏感。役に立たないやつ、と思われたら、リストか ら脱落。プレゼンのポイントは何か? を考えたい。質問 を繰り返し、質問を理解していることを強調しよう。

  124. 部長面接のプレゼン、自分の過去と比較して見ている。

    2 次面接が突破したら、この辺が採用の要の部長面 接。部長は、努力をしてその地位についた人が多い。し たがって自分の過去が採用の基準となっている。自分の 過去を、あなたの中に見いだすことが出来たら、採用さ れるに違いない。ここは本音で会話をした方が、好印象 であると思う。自説を持つことは必要。ただし、ここで 喧嘩を売ったり、自説やネタを振り回し、相手の話を理 解しないのは逆効果。声が小さいのは印象が悪い。

  125. 重役面接のプレゼン、彼にしようといわせる決めて。

    重役面接は、最後の確認作業。部長以下人事が選ん だものが正しいか、会社の未来に有望な人材か、膨大な 経験に基づいて直感的に決める。直感は以外と正しい場 合が多い。小細工は無用。重役に対しては、現役の社員 のように一目おいて、ある程度は尊敬の念をもって話を するのが好印象。不遜な態度は、部下が配慮して推薦し ずらくなるので自滅。小細工も、十分堂にいっていれば、 彼はいろんな意味で使えそうだという感じになる。自分 は他の人に比べて頭が良く回ると思うのなら、才気渙発 なところをさりげなく強調したい。口下手なら、辛抱強 さを強調したい。

  126. 大学の人事。推薦する審査員と別の人を推薦する審査員がいる。

    大学の人事の場合には、審査委員が合意で実績の判定を 行う。そのうえで実力互角と判断した人を呼びプレゼンで 決める。この場合、審査員の中には自分を取りたい人と別の人を 取りたい人がいるはず。別の人を取りたいと思っている審査員が 『しかたがない。こちらの方が良い。』と言えればOK。 この場合質疑は大変重要。別の人を取りたいと思っている審査員は 異る分野の人の場合が多いので、分かりやすく納得できる論理で 返事がしたい。どうせ分からないだろう、ような回答は推薦する人の 立場を失わせるだけ。

  127. 大学の人事。口先よりやはり実力。

    発表論文の内容や、努力というものは自然と見える もの。実力の社会でのプレゼンは、客観的な論理で攻め たい。客観的な実績は、自慢では決して無い。実績を正 確に述べ自分で正確に評価出来れば、良い判断材料にな る。判断材料を並べ示すこと、そしてそれが十分妥当で あることがプレゼンのポイント。論文の引用件数は、審 査員のほうで調べているので強調する必要は特にない。

  128. 大学の人事。落ちても、覚えられれば次のチャンス。

    公募でプレゼンまでいったひとは、いずれ別の場所 で採用される機会が多い。実績の評価が一定の水準に達 しているから。そのときに落ちた機会も、審査員も審査 の過程は必ず覚えていて、『まるまるさんも、良かった 』と問われたおき、いわしめることが必要。


R. Saito