微細な“巨人”応用無限



紙を使ってカーボンナノチューブの模型を作る参加者

 東北大の研究者と市民が科学の魅力を語り合う「サイエンスカフェ」が25日、仙台市青葉区のせんだいメディアテークで開かれた。本年度最初のカフェには、中高年や高校生など約160人が訪れた。
 テーマは「カーボンナノチューブの科学にようこそ―円筒形物質の発見と使い方」。大学院理学研究科の斎藤理一郎教授(固体物理学)が講師を務めた。
 カーボンナノチューブは炭素原子が筒状に並ぶ構造で、太さはクモの糸の1000分の1。形状によって電気を通す金属にも、半導体にもなる。強度は鉄の20倍、重さはアルミニウムの半分以下。
 斎藤教授は六角形を連続して印刷した紙を配布し、カーボンナノチューブの模型の作り方を説明。参加者は熱心に聞き入りながら、模型作りに挑んだ。

 質疑応答ではカーボンナノチューブの安全性や医療への応用を問う質問があった。斎藤教授は「研究中だが人体への害はないだろう。東北大大学院に新設された医工学研究科の研究に期待したい」などと答えた。

 仙台市青葉区の主婦泉田泰子さん(33)は「ナノチューブに興味があって参加した。紙細工で形をイメージすることができ分かりやすかった」と話した。




◆講演/新発想が進歩の鍵/東北大大学院理学研究科 斎藤 理一郎教授


  カーボンナノチューブが発見されてから十数年がたった。1メートルの10億分の1というとても小さな物質だが、無限の可能性を秘めた素材として世界中で研究が進んでいる。

 なぜ、ナノチューブを研究するのか。それは、科学では小さいことが有利になるからだ。

 コンピューターはハードディスクの小型化が進み、大きさが数十分の1になる一方、計算能力は数百万倍にもなった。人体に入って病気を治す極小ロボットも開発されている。

 カーボンナノチューブを構成する炭素は、加工しやすいのが特長。チューブの太さを自由に変えられるし、ほかの物質と混ぜることもできる。

 半導体として利用できるほか、非常に硬いので補強材にもなる。バドミントンのラケット、ゴルフクラブなど、身近な物にも使われ出した。数年で10兆円産業になると言われている。

 いろんな分野に応用できるナノチューブの研究は、まだ始まったばかり。誰にでもチャンスがある。皆さんの自由な発想で、新たな活用方法を見つけてほしい。


さいとう・りいちろう 東大大学院理学系研究科修了。電気通信大電気通信学部助教授を経て2003年から現職。専門は固体物理学。東京都出身。50歳。



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