PorousSilicon(多孔質シリコン)を用いた
1.54μmの光増幅導波路の作製

集積回路に応用が期待できる光増幅導波路の研究を進めています。
光波長1.54μmは光ファイバの最低損失波長であり、1.54μmの光増幅導波路は光通信へ応用できます。

  1. 導波路とは
    簡単に言うと、光伝送路であり、光ファイバの接合などに用いられる素子です。
    応用例としては、光を数本に分ける光分岐回路、光の波長によって分ける光分波回路などのほか、光スイッチや光変調器など、能動的な回路を形成することが可能です。
    本研究で作製する導波路は、1.54μmの光を増幅する、光増幅導波路です。
    光増幅導波路は、励起光によりPS層に反転分布を作り、1.54μmの信号光を増幅し、出力する素子です。
  2. 1.54μmのPL発光
    Erbium(Er)とは、原子番号68( 質量数167.24) の希土類元素である。
    イオンの基底状態、第1励起状態、第2励起状態、第3励起状態は
    それぞれ、1.54μm、0.98μm、0.8μmの発光波長を示す。特に1.54μmの波長の光は
    光ファイバの最低損失波長であり(0.16dB/km)、長距離伝送には有利である。

    図1 Erイオンの励起準位とそれに対応する発光波長
  3. PorousSilicon(PS)とは、日本語にすると、多孔質シリコンであり、孔の開いたシリコンを示します。
    PSの作製方法は、フッ化水素酸(HF)溶液中で、シリコン基板に電流を流すことによって作製できます。
    PSの孔の直径や深さは、元基板の性質(p型、n型、抵抗率)や作製時の電流密度や時間方法により変化します。
    下の図は、PS作製模式図であり、電界によって、基板側からは正孔が、HF:C2H5OH溶液中からは、F-イオンが、
    基板表面に集まり、その二つによってSiの結合が切り離されます。Siが溶液中に溶け出し、欠陥ができます。
    この反応が繰り返され、欠陥が積み重なって結果的に孔ができます。

    図、PS作製模式図

    下の図は、PSのSEM(走査型電子顕微鏡)写真です。数10nmの穴の開いたシリコンであることが分かります。

    図1 PS表面のSEM写真(10万倍)   図2 PS断面のSEM写真(5万倍)