イオン注入法により作製したEr添加Siにおける1.54um発光の時間応答

背景
Er添加Siにおいて室温での高い発光効率を得るために様々な試みがなされているが、高温での激しい温度消光が最も問題となっている。この温度消光は励起されたErイオンから母材であるSiへのエネルギー逆移動によるものであり、蛍光寿命の高温での非発光遷移確率の増加によるものと理解されている。しかし、近年、Er添加ポーラスSiの研究において、その発光の温度依存性は励起されたErの緩和過程だけでは説明できないことが分かってきた。
目的
単結晶Siを母材に用いてErを添加し、さらにNe共添加(ダメージの増加)、O共添加(発光強度増大、温度消光減少)をすることにより、PL強度と蛍光寿命の温度依存性が異なる傾向を示す試料を作製し、その試料のエネルギー伝達効率を”PL強度/蛍光寿命”と定義し温度依存性を議論する。

Si:Er 、Si:Er,Ne のPL 強度、蛍光寿命、
エネルギー伝達効率の温度特性

Si:Er 、Si:Er,O のPL 強度、蛍光寿命、
エネルギー伝達効率の温度特性
結論
  • Si:Er はPL 強度、蛍光寿命ともに100K 以上の高温で急激に クエンチングする。
    エネルギー伝達効率はほとんど温度変化しない。
  • Ne を共添加(ダメージ)すると、PL 強度は 30〜50K まで徐々 に減少し、100K 以上の高温で急激に減少する。一方、蛍光寿命は 150K までほとんど変化なし。
    母材にダメージを加えるとエネルギー伝達効率は100K 以上の高温で 急激に減少する。
  • O を共添加(ダメージ)すると、早い蛍光寿命を持った発光中心が 形成される。そのPL 強度は低温で徐々に減少するが高温でのクエン チングが少ない。一方、蛍光寿命は100K 以上で急激にクエンチング する。
    エネルギー伝達効率は100K 以上で上昇する。
    O 共添加による温度消光の減少はエネルギー伝達効率の上昇による ところが大きい。