- 3.新しい半導体への可能性
- 金属と半導体
- ナノチューブはその構造によって,金属にも半導体にもなる.
ナノチューブが金属にも半導体にもなるのなら、デバイスを作りた
くなる。一般に、半導体に電気を流そうと思うと3価か5価の不純物
を添加し、それぞれ p型 n型の半導体を作って実現した。しかしこ
の方法は、1 nm ぐらいの大きさでは不可能だ。なぜなら不純物が
作るエネルギー準位は不純物のまわりに十分広い空間(10 nm 以上)
が必要だからだ。だから現在の半導体技術が向上し100nm ぐらいの
細い回路はつくることができるかも知れないが10nm, 1nm だと発想
を変える必要がある。カーボンナノチューブは発想の転換を可能に
する物質なのだ。
- 新たなデバイス
- ナノチューブは半導体や金属を不純物をドープせずに実現できる。
したがってまず大きさの下限はナノチューブの大きさの下限
(0.7nm)まで下がる。しかも螺旋度を変えればほぼ同じ半径で金属
と半導体のチューブを炭素だけでできる。例えばこの性質を利用し
て、2 層の同心チューブを考えて、外側に電気を流さない半導体の
チューブ中を金属チューブになるようにすると、最小の『被覆電線』
が可能だ。3 層の同心チューブで真中を半導体にして2つの金属を
はさむとコンデンサー(メモリ)ができる。さらに次にお話しするよ
うに、金属チューブと半導体チューブをつなげると、スイッチを作
ることができる。このように、デバイス、コンデンサー、配線すべ
てナノチューブでつくることができる点が味噌である。これで小さ
い空間で回路をつくる役者は揃った。
金属と半導体を接続するというのは、『木に竹を継ぐ』ような感じ
だ。一般には異なる物質が接する界面でいろいろ問題がおきやすい。
界面の大きさを小さくすると、均質な界面を作るのは非常に難しい。
しかしナノチューブの場合には、両方とも炭素だからつなぐのは問
題ない。
- 異径のチューブをつなげる
- 螺旋度の異なるチューブを接合できるだろうか?
答は明解 yes である。
異径の
チューブをつなげるのは、六方格子だけでは無理だ。しかしフラー
レンの設計図の部品であった五角形や七角形を使えば可能だ。六方
格子に五角形があると辺が1つ足りないので図のように円筒形が閉
じようとする。その先に七角形があると閉じるのが止まる。五角形
と七角形の間が円錐台状になり異径のチューブが接合される。
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