大学院進学希望者へ

Last modified: Wed May 2 12:21:00 JST 2018

このページは主に他大学からの受験を考えている人、 物理学科からの進学を考えている人を対象に私の研究室 の研究内容を説明します。長い文なので、拾い読みで結構です。 2019年4月に入学する場合には、私の定年まで4年間しかないので、 修士課程のみ私の研究室で研究することができます。 博士後期過程に進学したい場合には、東北大学の他の 研究室に進学することができます。

私の研究室は、固体の物性を理論的に研究しています。 物性理論研究室(青葉山)に属しています。特に

  1. カーボンナノチューブ・グラフェン・原子層の物理
  2. 第一原理計算の物性への応用

を行っています。前者が式や理論を検証していく方法論、 後者が計算機で現実を再現していく方法論を多用します。 以下では、研究内容を説明し、物性理論に進学するため の入試の状況(私見)を説明します。

ナノチューブ・グラフェン・原子層の物理

国際共同研究: 前者の大きな成果であり、 課題であるものにカーボンナノチューブの物理がありま す。ナノテクノロジーおよびナノ科学の分野では実績が あり、 私と一緒にこの分野の開拓を行います。科学研究 費を中心にいろいろなグループと国際共同研究として進 めています。

大学データベースで検索: 東北大学の 研究者情報などを参照していただければ他の先生を 含めて、研究の詳細な内容や、アクティビティがわかる と思います。

論文の引用件数で検索: ナノチューブの最初の論文は引用件数。が2000を越 えています。大学院の皆さんが発表した論文で引用件数 が100 を越えるのも、4 件あります。研究を進めるには 研究室内での共同研究が不可欠です。研究は一人で行う ものではありません。

研究予算: 科学研究費など研究予算をいた だいているので、責任をもってこのプロジェクトを推進 していく必要があります。忙しい仕事ですが、おおくの 研究者と一緒に一生懸命研究することによってみなさん の得られるもの(成果、 知識、語学力) は非常に大きい と考えられます。

研究成果: 最近の論文リストを私の Home Page から見ていただくとわかると思いますが、東北 大に着てから15年間で200編の論文発表しました。このペー スを維持します。ここ数年主に実験のグループと書いて います。研究室はこの6年は毎年2000件以上の論 文引用回数があり、ナノチューブの世界では、老舗の研 究室になりました。

実験グループとの共同研究: グラフェンやナノチューブの世界は、理論が実 験の解釈と展開に重要な役割をしています。ナノチュー ブの固体物理を勉強すればほぼ、ほとんどの物性の物理 の分野をカバーして理解できると思います。

拡大し続けるナノカーボン分野: 世界中には、 数千人のナノカーボン研究者がいると推定されます。特 定の物質で、これぐらいの規模の研究者がいるのは例外 的です。昨年度は、世界で8000 件を越える論文が発表さ れました。

大学院生もたくさん論文発表: 皆さんの新しい力が、また良い論文を作りま す。簡単ではありませんが、やりがいがあります。博士課程の学生さんは 平均10編の論文を3年間で書いています。そういうと皆さん 最初はビックリするのですが、第一著者の論文がそのうち 4編ぐらいで残りは共著です。下の学生の面倒を見たり、 実験グループの論文に解釈で参加したりしますので、 やることをやっていますと、それぐらいの数になります。

学会発表: 学会発表は、修士の時からおこなっています。また研究室で主催する 会議もあり、その運営も手伝ってもらっています。博士課程に進学後は 国際会議での発表もお願いしています。

研究目標: 研究室では、おもに実験と協力して新しい概念や理論を打ち立て ることを目標にしています。ナノチューブの研究の詳細 に関しては、齋藤の 解説記事(Web の個人の頁にあります。)を読 んでみてください。大学院で私の研究室を志望するのな ら、 「カー ボンナノチューブの基礎と応用」という本を読んで みてください。面接のときなどは役に立つと思います。

大学院に合格したら入学するまでに、ナノチューブの教科書 を式を含めて理解し、我々の研究室の財産であるコンピュー タのプログラムを動かしてみることができます。

ナノカーボン研究のテーマ

  1. ナノチューブの励起子の物性と、超高速分光の理論

    電子格子相互作用、コヒーレントフォノン分光の計算プログラ ムを用いて、発光やラマン分光の未知の物性に挑戦しま す。M2の岩崎さんが研究をしています。MIT, ライス大学, フロリダ大学、ブラジル、韓国、中国、フランス との共同研究が継続 しています。

  2. グラフェン, ナノチューブのラマン分光

    新しい炭素物質である、 グラフェン, ポリインのラマン分光 を理論的に解析することをおこなっています。D3のショーフィーさんが グラフェンのTHz電磁場吸収の経産を行っています。 原子層物質の光吸収も、卒業した辰巳さん、金子さん(PD)、和君 が研究をしていまして、論文に投稿中です。 シンガポール、MIT、東工大、ブラジルのグループとの共同研究です。

  3. 近接場、光の伝搬

    波長より短い長さの世界では、近接場という電磁場があります。 ナノの世界では、エネルギー伝搬でこの近接場という概念は重要です。 M2 のプラタマさんが近接場のラマン分光の研究をしています。

  4. 2次元物質の熱起電力

     D2 のグエンさんと助教のヌグラハさんが、2次元物質の熱起電力 の計算をして、熱起電力の効率をどうやって大きくするかを追求しています。

電子状態を中心とした計算物理

計算物理の目指すもの : 2 番目の大きなテーマとして、第一原理計算と呼ば れる経験的なパラメータを使わない計算手法を用いて、 未知の物質を設計し自然界に存在しない新しい機能を作 ることを目的としています。単に計算結果を出すのでは なく、計算結果が何を意味するか? 式で説明できないか? が議論の中心になります。驚くべき計算結果から新しい発見が あります。

計算機 : 研究室には、計算プログラムは既に install され ていて、並列計算機上で動来ます。Quantum Espresso, gaussian09, など標準的なコードがあります。 第一原理計算も使う時代になり、M1のイスラム君やD2のグエン君が 電子状態の計算で頻繁に使っています。

言語能力 : 多くの研究室と同じように、 プログラム言語や英語などの経験を持って いることは望ましいことですが、必要なことではありま せん。必要に応じて自分で勉強していくことができれば、 経験は問いません。物理以外の経歴を持っていて も問題はありませんが、その過去の経験は生かすような 研究にしたいと考えています。私にとっても境界領域を 理解できるメリットがあります。

良く学び、楽しむ

何を学ぶか? また、自分と関係ないからといって勉強を狭い範囲 で行うのは大学院の勉強としては望ましくありません。 いつどういう勉強が何に役に立つかわかりません。いろ いろ友だちからの刺激を受け、自分の興味としていなかっ たことも積極的に勉強することをすすめます。大学院時 代の勉強は多くの教科書を読むことだと思います。

質問の受付: 詳しくは研究室の Home Page 以下のいろいろなペー ジをご覧になって見てください。ご質問があれば e-mail でお答えしますがあくまで進学の意思がある場 合にかぎらせて頂きます。

就職の実績: 基礎となる知識は、大学の授業で行う内容で十分で す。方向と道具は正しく指導します。あとは、計画的に 仕事を進めていく努力と意思があれば、大きな仕事をす ることができます。

就職の実績: 理論の研究室ですが、基礎を学ぶ ので就職状況 が良く、修士卒業の場合には大手の電気メーカーを 中心に研究所、事業所で活躍しています。修士課程、博 士課程修了後も責任をもって進路を探します。どうすれ ば採用されるかなど、就職活動(面接など)に関しても助 言します。東北大学の学生としての実力相応の振る舞い が要求されます。

コミュニケーション能力: 就職後、また研究において個人の努力は重要ですが、 社会で活動する限り、個人の努力を支える人がいて 伸ばしてくれる人がいることを忘れてはいけません。 自分が持っている能力を最大限に生かすために、 コミュニケーション能力の勉強は必須です。 自然と身につくと思っているのは、誤りだと思います。

研究室はコミュニケーション能力を作る場: どんな場合でも、楽してすばらしい結果がでること はありません。努力を惜しまない姿勢、規則正しい生活、 コミュニケーション能力と、研究室のなかの社会で協力してく れる人が望まれます。学年で1番というのはあてになり ません。個人の努力で勉強がどんなに出来ても、大学に来ない、指導 教員と議論しない、指導教員に説明が出来ない、後輩の 面倒はみない、研究室で協力したくない、という人は、 どこの研究室でも成長は期待できないです。

計画性と体力: 大学院でどうすれば良い研究ができるかを学べば、 それほど苦労することはないと思います。何事も、めん どくさがらないで、大きな仕事の山を毎日少しずつ崩し ていくような計画性があると、あるとき大きな転機が訪 れ、急速に研究のスピードがあがります。スピードが上 がっても慌てず、体力をつけ確実にこなしていけば、そ のスピードは雪だるま式に大きくなり、いつしか、皆さ んも大学の教授になっていることでしょう。大きな雪だ るまにするには、努力と大きくなっても同じスピードで ふくらませ続けることができる、気力体力の向上が必要です。

普通の学生を続ける: 元気だけが取柄、健 康、失敗しても気にしない、頼まれたことの動作確認の連絡をする、 朝規則正しい、掃除が好き。外国人と話すのが好き、というような 学生であれば、あとは気長に努力してくれれば、必ず良い成果を出してくれ ると思います。25 年以上いろいろな学生を見てきました ので、どういう学生が伸びるかはだいたい間違いなく見 分けられるようになってきました。『普通の学生を続ける』 ことが、最大の能力です。

教育方針: どんな気質の学生であっても、社会にでても困らな い人材を育成する、正攻法な基本姿勢は貫きたいと考え ています。

スポーツ: 個人的な趣味として、健康のため卓球を週1回研究室でしています。 卓球の好きな人は一緒にしましょう。理学部の 卓球大会も主催しています。 畑仕事も好きです。研究室の遠足もあります。

事前の相談: さらに自分でこういう理論的な研究をしたいという 提案があれば、事前にご相談に応じます。新しい分野の 開拓には常に興味を持っています。

研究室の環境

計算機: 研究室には、workstation や 端末は人間の数以上 あります。現在は Xenon クラスター(40CPU) などが主力機です。また外国 人研究者も外国人訪問者も多数いますので、英語の勉強 にもなると思います。2013.4 現在インドネシア(3)、ベトナム、バングラデシュの学生さんがいます。夏にはロシアから1名、秋からは中国の学生も研究室に加わる予定です。 研究室は、いつも国際的です。

研究室のお手伝い: Linux や 英語に精通していると、研究室でいろい ろお手伝いをお願いします。これは、計算機を扱う研究 者としての重要な資質であると思います。また、予算を いろいろ使いますので、適切なものを買うための知識、 さばきかた、も重要な資質です。時間の使い方が良く、 秘書さんが頼りにするような学生になってください。 人から多く頼まれるということは、研究室では信頼して いる証であると思います。研究室で重要な位置にいれば、 将来は大学に残る人材になります。単に(優秀な学生)= (大学に残る)、というほど単純ではないと思います。

仙台: 仙台市の青葉山にあり自然の豊富なところです。東 京地区に比べて家賃が安く(3,4 万) 生活がしやすいと ころです。東京の私学の大学院にすすむよりかなり経済 的に負担が少なく、研究環境が良いといえます。また、 仙台は都会ですが大学からすこし離れたところにあり、 余分な雑音が少ないところであると思います。一方、自 然に囲まれ、スキー場にも一番近いところでは車で 30 分(見えます)と、海山、温泉に恵まれたところです。 3 月の地震から復旧して、通常の研究体制に戻っています。

宴会: 私自身が、スポーツや宴会が好きです。 イスラム教の人もいますので、研究室のなかで宴会をすることが 多いです。自分で一つ料理を作ることになっていますので、いろいろな食べ物が食べられます。

東北大学の入学試験の様子

(以下の文章は齋藤の個人的な目で見たもので、専 攻の公式の意見ではありません。正確なことは専攻事務 室や理学部教務にお問い合わせ下さい。)

難しい? 東北大学の物理専攻の大学院は定員に対して出願者 の数がそれほど多くなく (2017 年実績で 1.2 倍はない と思います。) 、入学試験は基礎学力を問うていると考 えられます。過去の問題は、Web 上にありまた大学説明 会などで配布されているようです。物理学専攻に合格を することは物理を一通り勉強していれば難しくないとい えます。しかし私の属する物性理論研究室に 第一希望 で合格するには、成績順にしますので受験者のなかでも 上位の成績であることが必要です。ですが、 私の研究室を希望するのは、それほど難しくないと思います。 くるものは拒みません。

入試問題: 個人的な感想ですが過去の試験問題をみると、物理 の試験時間が長く、力学や電磁気学の問題が難しいので 受験勉強が必要であると思います。一方量子力学や統計 力学はごく基本的なものであり、満点をとることは著し く困難とはいえないと思います。他大学からの受験に不 利な問題はないと、客観的に評価でき ます。むしろ問題の難しさを感じて、受験を躊躇してい るひとが多いのではないでしょうか? 入試問題は 2007 年度の入試から大きく改善されました。 試験は 1日、面接1日です。問題は標準的なものに限 定。外部からの受験者にもかなり公平になりました。詳細は物理専攻のペー ジへ。

他大学からの受験: 現状の倍率が低いので、合格圏内に残るのは、 『解ける問題を確実に解く』限り容易であると思います。白紙や途中棄権では もちろん合格はできないです。個人的な意見ですが、東北の近隣の大学や私立大学から もっと受験生があってしかるべきであると思います。

受験勉強: 物理、工学部、からの受験生 でも受験勉強をされている限り、『そこそこの成績』が とれると思います。過 去の問題 をみてわかるように、問題の最初の方は、 誰でも解ける問題になっています。(どこの大学院の問 題もそうなっていると思いますが)。よく問題を読み、 質問に答えていけば得点をつんでいくことができます。

志望の選択: 一方最終的な志望先の選択は成績順ですので、第一 希望に確実に行きたい場合には、成績上位に食い込む必 要があります。東北大物理専攻の トップクラスは(手前 みそですが) 本当にできますので、上位に食い込めるか 力試しにはなります。重要なのは、 志望先を限定しなければ、合格はできるということです。必ず 第三志望まで 書いてください。実は第三志望が一番良い研究室だったということは 多いです。

説明会: 例年 5 月の終りの土曜日に物理学専攻説明会があ ります。これは大学院受験者を対象としたものですので、 出席しますと直接多くの先生の生の声を聞くことができ ます。もちろん出なくても受験に不利になることも有利 になることもありません。無理して遠方から来る(歓迎 しますが) 必要はありません。研究室見学もありますの で、研究環境などを見て決めたいという人には、この機 会を是非おすすめします。3 年生の受験にも条件付です が門戸を開いているので、説明会に参加できます。物理専攻のペー ジを見てください。

生活・ランキング: 東北大は、有名なデータバンクの ISIS の 2008 年 の調査ですと、物理で 国内 2 位 世界 13 位の研究評 価を得ています。研究者として育つ環境としては、良い と思います。また、仙台は東京など大都会に比べて雑音 が少ないので、まじめに研究するには適した環境といえ ます。下宿のアパートの家賃も東京に比べると安い(駐 車場付で 3 万円台から) ので経済的にも楽です。

面接: 大学院入試での物性理論の面接は、物理一般のこと を問いますが、受験した試験の問題を再度黒板で説明し てもらうことをするようです。(これは秘密ではないと 思います。)外部から来た人が不利にならないように、 面接を受ける前に自分の受けた問題の分析をすることを おすすめします。我々は、問題がとけるということより も、考え方、論理、説明の仕方を重視します。

研究室配属: さらに物性理論研究室に合格してから、指導教官を 選択するのは例年 合格が 9 月に決って今年は10月上旬 には指導教員が決まります。ですのであらかじめ受験す るまでに、さらに専門のことを直接志望する教官と話し て自分のしたいことを見極めてもらうことが必要である と考えています。学生どうしでやりたいことを良く話し 合って、事前に調整してくれると良いと思います。

最後に: 物性理論研究室には、魅力的な先生が数多くいます。 私のところに希望する学生がそんなに多くありません。 物性理論研究室に合格すれば、私のところに来るのは 容易であると思います。ぜひ、ナノチューブの研究をしてみませんか?

ドクターからの入学も可能です。

後期編入試験: 理学研究科の博士課程後期3年の定員の充足率が 100% いかないことが多く、内部進学者だけでなく、一 般や社会人、留学生にもドクターコースへの入学を募集 しています。 Master でまじめに仕事をしていると自他が認めるならドクターコースに進学は容易です。その後の努力が必要です。 毎年 11 月に資格審査、1 月に出願、2 月 に試験という手はずになっています。社会人の人は会社 をやめること無く博士課程に入学することができます。 理学研究科では募集を行っていますが、そのことを知ら ない人は少くないと思います。もし ドクターから入学 したいと考えている人は、研究室に入りたい先生に直接 問い合わせるか、理学研究科大学院教務課 (022-795-6351) に 11 月の頭ぐらいに問い合わせてく ださい。10 月入学の制度も始まっています。

この頁を最後まで読んだみなさんと研究ができるこ とを期待しています。


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rsaito@flex.phys.tohoku.ac.jp