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科研費特定領域研究(A)
フラーレンナノチューブネットワーク
ニュースレター No.1 (1999) p.1

フラーレン・ナノチューブネットワーク

〜 新しい物性科学の舞台 〜
 

この度、文部省科学研究費補助金・特定領域研究(A)「フラー レン・ナノチューブネットワーク」が発足致しました。研究期間は、 21世紀初頭となる平成12年3月までです。本特定領域研究を展 開するにあたりまして、領域内での研究情報交流、さらには、研究 成果の公開を目的としまして、ニュースレターを発行することに致 しました。

フラーレン系は、その存在形態と物理的・化学的性質の多様性 により、1990年のC60大量合成以来、理工学諸分野で、 様々な観点から着目され、研究がなされてきたことは御承知の通り です。そして、1991年に発見されたナノチューブも含め、各種高次 フラーレン・金属内包フラーレンの大量合成が進みつつある現在、 ネットワークトポロジーに依存して大きく物性を変化させるという、 その魅力に富んだ新しい物質構築単位としての側面が、大きくクロー ズアップされつつあります。即ち、ナノチューブ・フラーレン結晶 系では、「原子→フラーレン→固体集合相」という構造における階 層性により、その電子状態においても明確な階層性が存在している ため、高温超伝導・分子強磁性など、通常の非階層性固体では見ら れない多様な性質が実現されることが判明しているからです。この、 現代の錬金術とも言える側面を持つ本領域は、資源小国であるわが 国にとって最重要研究課題の一つであると言えます。最近、炭素系 のみならず、Si系、BN系など、他の共有結合元素からなるネットワー ク物質系の合成も進みつつあります。本特定領域では、生成過程の 解明と高効率合成、さらにはナノエレクトロニクスへの応用も目標 に含めまして、理論研究・実験研究の強い相互作用により、ネット ワークトポロジーと階層性の支配する新しい物性科学構築をその目 的として研究を展開してまいります。多方面の研究者の方々の御協 力をお願いする次第です。

領域代表     斎藤 晋
東京工業大学大学院理工学研究科教授