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科研費特定領域研究(A)
フラーレン・ナノチューブネットワーク
ニュースレター Vol.2, No.2 (2000) pp.17-20.

会議だより

 

                     

NANOTUBE-99
International Workshop on the
Science and Application of Nanotubes

East Lansing, Michigan, USA, July 24-27, 1999

 

Nanotube99 ワークショップは、1999年7月24日から27日まで、ミシガン州立大学East Lansing キャンパスの前にある、マリオットホテルで開催された。オーガナイザーは、同大学のトマネク先生である。先生のきさくな人柄と献身ともいえる会議への気配りがあってであろうか、この手弁当ともいえる会議は、ほぼ世界中のナノチューブの研究者を集め、極めて有効な手法で会議が行われた。また、その内容はまさしく最新のもので、非常にインパクトのあるものであった。その驚きと興奮をうまくお伝えできるかどうかわからないが、議論した内容を参加者の一人として報告する。あわせて斬新な会議の手法特にポスターセッションの方法を紹介する。会議のWebページ http://www.pa.msu.edu/conf/nt99/ は、まだ存在するのでプログラム Abstract等はWebページを参照いただければ幸いである。

 

写真:主催者のミシガン州立大のトマネク先生、新しい会議の進行方法を

積極的に導入した。空気いりのハンマーは、議長が時間オーバ防止などに

利用した。写真は会議の終了をハンマーで宣言しているところ。(1999.7)  

会議の形式

会議の前半2日間はポスター発表のみ、後半2日間は招待講演のみの口頭発表という形式である。トマネク先生の作戦は、できるだけ多くの人に会議に直接参加させることのようだ。ポスターも1回の発表を10程度にくぎり(1)ポスタートーク、(2)ポスター会場でポスター発表 ()ポスタートークの会場で全体質問 というサイクルを2日間で10回程度繰り返す形式である。立ったり座ったりの繰り返しあるが1日座るより、時差ぼけの人には助かる。また1回の発表が10程度であるから、一通りポスターを見て質問をすることができる。ポスターに興味のない場合でも、廊下で他の人と議論できる。休憩をポスター発表の時間に適当にとってもらうことができる。など時間面の節約も見逃せない。全体質問では、議長の力量で問題の焦点を絞りまとめ議論した。質問が多く出て見応えのある企画であった。後半の招待講演者もポスターで次々とでる新しい結果や問題を踏まえてあとで話さなければならないので、その分緊張感をもってポスターを聞くことになり、会議全体がしまるような気がした。

次にいくつか発表で興味があったものをニュース形式で紹介する。

いくつかの興味深い発表

CVD成長

Boston大学のRenらのCVDによる多層ナノチューブの成長である。右図にしめしたとおり大変きれいにそろえて成長をすることができる。アンモニアガスをいれると成長がコントロールできるらしい。会議に出席したウィスカーの研究で有名なチベットによると、カーボンファイバーの合成ではアンモニアはよく使う気体であるそうである。関連する論文が、APL75(1999)1086にある。

CNT−FED

韓国企業連合(サムソンなど)は、カーボンなのチューブの4.5インチディスプレイを発表その場で右のような薄型ディスプレイを見せた。まだ3色色が出るだけで輝度調整や画像処理回路等は製作段階である。日本でも伊勢電子工業と三重大齋藤弥八先生グループがすでに発表済みである。実用化に向けての競争がいっそう盛んになることが予想される。

究極の微細加工

Zyvexという会社のSkidmoreらは、3軸のマニピュレータを用いて、ナノチューブを切ったり、つなげたり、結び目を作ったりすることができることを、ビデオで発表した。この技術はナノチューブのデバイスを作成するときには、大変有効な手法である。

トーラス

IBMのAvorisらは、ナノチューブを超音波のキャビティ効果を利用して丸くして電極につけAB効果をみた。ナノチューブを丸くする技術が大変興味深い。

フェムト秒分光

ドイツのHertelのグループは、励起した電子の緩和をフェムト秒分光で観測した。結果のスペクトルは、フェルミ分布関数によくあう。電気伝導で電子電子相互作用が強い場合に見られるラッティンジャー液体の報告との関係が興味もたれるところである。

SERS

Surface Enhanced Raman Spectroscopy の略である。金コロイド粒子をナノチューブに接触させると接触部分のラマン効果がけた違いに大きくなる現象である。いくつかのグループから報告された。究極として1本のナノチューブのラマン効果を測定することをめざしている。

このほかに、ドープすると炭素原子間が伸び縮みすることを利用して作った、ナノチューブによる人工筋肉の報告がアライドシグナルのボーマンからあった。ジャンクション系での整流効果、ラマンの分極効果、pnジャンクション、磁性体を電極にしたスピン輸送特性、AB効果での異常、キャップの電子状態、STM/STSの実験と理論など、数多くの議論が展開された。ミシガンは、夏涼しく、キャンパスの中に植物園などがあり大変快適な環境のなかでの4日間を過ごした。ワークショップはこうありたいと思うような大変楽しく、役にたつ会議であった。

 

(文責 電通大 齋藤 理一郎 1999年11月11日作製)