Emacsには高度なヘルプ機能があります.ヘルプにはC-hという単一の文 字を使います.C-hは接頭辞キーで,ヘルプのためだけに使われます. C-hのあとに入力する文字をヘルプオプションといいます.ヘルプ オプションの1つにC-h自身もあります.これはC-hの使用方法につ いての説明を表示します.
C-h C-hは利用できるヘルプオプションを表示し,オプションを入力す るように促します.プロンプトは次のような文字列です.
A, B, C, F, I, K, L, M, N, S, T, V, W, C-c, C-d, C-n, C-w or C-h for more help:
このうちの1つを入力します.
3回C-hを入力するとオプションの意味が表示されます.そしてオプショ ンが新たに入力されるのを待ちます.キャンセルするときは,C-gを入力 します.
以下はヘルプコマンドの要約です.
command-apropos
).describe-bindings
).describe-key-briefly
).
cは`character'のcです.keyについてさらに情報を得るには
C-h kを使います.describe-function
).
コマンドはLisp関数なのでコマンド名も使えます.info
).
Emacsの完全なマニュアルがInfoでオンラインで見られます.describe-key
).view-lossage
).describe-mode
).view-emacs-news
).describe-syntax
).help-with-tutorial
).
describe-variable
).
where-is
).
最も基本的なC-hオプションは,
C-h c(describe-key-briefly
と
C-h k(describe-key
)です.C-h c keyはエコー領域
に割り当てられたコマンド名を表示します.たとえば,C-h c C-fは
`forward-char'と表示します.コマンド名はコマンドの機能から決められ
ているので,キーの機能の簡単な説明を得るにはよい方法です.
C-h k keyも同様ですが,より多くの情報が得られます.これは, keyが割り当てられたコマンドの名前とドキュメントを表示します.この 情報は多いのでエコー領域は使わずウィンドウを使います.
C-h f (describe-function
)はミニバッファからLisp関数名を読
み込み,ウィンドウにその関数のドキュメントを表示します.コマンドはLisp関
数なので,これを使って名前を知っているコマンドのドキュメントが得られます.
たとえば,
C-h f auto-fill-mode RET
これはauto-fill-mode
のドキュメントを表示します.これは(M-x
で呼び出すような)キーに割り当てられていないコマンドのドキュメントを見る
唯一の方法です.
C-h fはLispのプログラム中でLisp関数を使おうとするときにも便利で
す.たとえば(make-vector len
)と書いたとき,make-vector
を正
しく使っているかどうかを確かめるには,C-h f make-vector RET
とします.C-h fではコマンド名だけでなく,すべての関数名が使えるの
で,M-xでいつも使っている略称がC-h fでは使えないこともありま
す.ある略称がコマンド名の間で同じものがなくても,関数名も候補とすると同
じものがあるかもしれません.
C-h fはデフォルトの関数名を持っていて,RETだけを押してミニ
バッファから抜けたときに使用されます.デフォルトはポイント周辺のバッファ
で最も内側のLisp式によって呼び出されている関数です.ただこの場合は,正し
く定義されたLisp関数名であることが必要です.たとえば,ポイントが
`(make-vector (car x)'というテキストの後ろにある場合,ポイントを含
む最も内側のリストは`(make-vector'で始まるものなので,デフォルトは
make-vector
になります.
C-h f
は関数名の綴が正しいかどうかを確認するときに便利です.
C-h fがデフォルトでプロンプトとして表示するなら,定義されたLisp関
数を正しく入力しています.知りたいことがわかったなら,C-h fコマン
ドをとりやめるためにC-gを入力し,編集を続けます.
C-h w command RETはどのキーがcommandに割り当て られているかを表示します.commandがどのキーにも割り当てられていな いと表示されたなら,そのコマンドを使うためにはM-xを使う必要があり ます.
C-h v (describe-variable
)はC-h fと似ていますが,
Lisp関数の代わりにLisp変数の説明をします.デフォルトはポイント周辺または
ポイントの前のLispシンボルです.しかし,Lispの変数として知られている名前
に限ります.See section 変数
もっと高度なヘルプの利用法は,"ファイルを使うためのコマンド"を探し出
すことです.これには,C-h a file RETと入力すれば,
`file'という文字列を含んでいるコマンドがすべて表示されます.たとえ
ばcopy-file
,find-file
などです.表示されたそれぞれのコマン
ドには,その使い方の簡単な説明と,現在どのキーで呼び出せるかが,同時に表
示されます.たとえばfind-file
はC-x C-fと入力すればよいとい
うことがわかります.C-h aのaは`Apropos'の意味で,C-h a
によってLisp関数command-apropos
が実行されます.
C-h aは指定した文字列を含む関数しか検索しないので,指定には工夫 が必要です.逆方向に削除するコマンドを探すためにC-h a kill-backwards RETと入力して,何も表示されなくてもあきらめないで ください.アドベンチャーゲームでもやっているつもりで,killだけ, backwardsだけ,backだけ,としんぼう強く試してみてください. また同様に,引数に正規表現を使って試してください(see section 正規表現の構文).
以下のものはC-h aに続く引数の例で,これらはEmacsの多くのコマンド
に含まれています.Emacsの標準のコマンド名の付け方には慣行があるからです.
以下の一覧を見て,名前の付け方の慣行を知ってもらえれば,apropos
で
文字列を探す技術が向上します.
char, line, word, sentence, paragraph, region, page, sexp, list, defun, buffer, screen, window, file, dir, register, mode, beginning, end, forward, backward, next, previous, up, down, search, goto, kill, delete, mark, insert, yank, fill, indent, case, change, set, what, list, find, view, describe.
コマンドとして定義されているシンボルだけでなく,すべてのLispシンボルの うち正規表現と一致するものを表示させるには,C-h aの代わりに M-x aproposを使います.
C-h i (info
)はInfoプログラムを走らせます.これは階層化さ
れたドキュメントファイルを見るプログラムです.Emacsの完全なマニュアルは
Infoで得られます.将来GNUシステムのすべてのドキュメントが得られるように
なります.Infoに入ったあとhを入力するとInfoの使い方の説明が得られ
ます.
何かのきっかけで入力したコマンドがわからなくなったときには,C-h
l (view-lossage
)を使います.C-h lは入力した最近の100このコ
マンド文字を表示します.知らないコマンドが表示された場合には,C-h
cを使えばその機能がわかります.
Emacsにはいくつかの主モードがあって,それぞれいくらかのキーを再定義し
ているので,編集機能が少し変わります.C-h m (describe-mode
)
は現在の主モードに関する情報を表示するもので,この主モードで変えているす
べてのコマンドについて説明します.
C-h b (describe-bindings
)とC-h s
(describe-syntax
)は,現在のEmacsモードについての別の情報を表示し
ます.C-h bは,現在実際に結び付いているすべてのキーのリストを表示
します.現在の主モードに,ローカルな結び付きを先に,グローバルな結び付き
を次に表示します(see section キーの結び付きのカスタム化).C-h sは,構文表をその構成
文字の説明と合わせて表示します(see section 構文テーブル).
その他のC-hオプションは有益な情報を含んだファイルを表示します.
C-h C-w (describe-no-warranty
)はGNU Emacsの無保証についての
詳細を表示します.C-h n (view-emacs-news
)は
`emacs/etc/NEWS'というファイルを表示します.これはEmacsの変更に関す
る情報を時間順に並べたものです.C-h t (help-with-tutorial
)
は,Emacsの動作を試しながら習えるEmacsチュートリアルを呼び出します.
C-h C-c (describe-copying
)はファイル
`emacs/etc/COPYING'を表示します.これは,Emacsのコピーを配布すると
きの規定についてのファイルです.C-h C-d
(describe-distribution
)は`emacs/etc/DISTRIB'というファイルを
表示します.これはEmacsの最新バージョンの注文方法についてのファイルです.