Emacsを使って編集しているテキストが置かれているところは，バッファと呼 ばれます．ファイルを読み込むごとに，そのファイルのテキストを置くバッファ が作られます．Diredを呼び出すごとにディレクトリリストを置くバッファが作 られます．C-x mを使ってメッセージを送るときには，バッファ `*mail*'がメッセージを置くのに使われます．コマンドの説明を要求する と，それはバッファ`*Help*'に現われます．
常に1つの，1つだけのバッファが，選択されています．このバッファは カレントバッファとも呼ばれます．コマンドが"バッファ"に操作を加え るといういい方では，あたかもバッファがただ1つしかないようですが，実際に は選択されたバッファに操作を加えることを意味します(ほとんどのコマンドは， バッファに対して操作を加えます)．
一度にたくさんのウィンドウを作ると，各ウィンドウに1つずつバッファが結 び付いて，画面に表示されます．しかし，常に1つの，また1つだけのウィンドウ が選択され，それに結び付いたバッファが選択されたバッファとなります．それ ぞれのウィンドウのモード行に，そのウィンドウに結び付いたバッファの名前が 表示されます(see section マルチプルウィンドウ)．
それぞれのバッファには名前があります．名前の長さには制限はありません． 名前を使ってバッファを選択できます．ほとんどのバッファはファイルの読み込 みによって作られ，その名前はファイル名によって付けられます．しかし自分で 好きな名前をつけた空のバッファを作ることもできます．Emacsを最初に起動さ せたときには`*scratch*'という名前のバッファがあります．このバッファ はEmacs上でLisp式を評価するのに使えます．バッファ名では大文字と小文字が 区別されます．
バッファはそれぞれ，どのファイルを読んだか，バッファが修正されたか，現 在どの主モード，副モードかを独立に記録しています(see section 主モード)． Emacs変数は，すべて特定のバッファにおいてのみ参照できるローカル変数にする ことができます．つまり，同じ変数名でも，あるバッファと他のバッファ では，その値を違ったものにできます．See section ローカル変数.