ダイヤモンドとは?

…1997年度修士論文 中村 伸之 序論より

ダイヤモンド気相合成の歴史
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ダイヤモンド気相合成

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ダイヤモンド合成の背景

ダイヤモンドの人工合成は1950年代にGEのグループによつて初めて達成され た。その原理は、ダイヤモンドが原始地球において天然合成されたと推定される条件を実験室で再現するものであった。この方法は高温高圧法(高圧法)と呼ばれ、ダイヤモ ンドの平衡条件である20万気圧、2000℃以上の過酷な条件を必要とした。

一方、近年開発された気相合成法、特に、化学気相合成( Chemical Vapor Deposition CVD )法は、比較的低温(<1000℃)かつ減圧の条件下で、原料として主にメタンを用いてダイヤモンドを合成する技術である。

単結晶ダイヤモンド薄膜合成(もしくはウエハー)はシリコンなどに比べて一般的に難しい。これは以下の理由による。

  • 融液からの結晶成長ができない
    シリコン等の比較的融点が低い元素を結晶成長させる場合、その融液を作り種結晶からバルク結晶を作製する方法が採られる。しかし、ダイヤモンドの構成元素である炭 素は、融点が黒鉛で3500℃以上と融液を作るのは現実的でない。

  • 気相成長が難しい
    GaAsやシリコンの薄膜を作る場合は、蒸着やスパッタ蒸着、MBE等を用いることができる。これに対しダイヤモンドはただ蒸着するだけでは作製できない。炭素の 安定相がグラファイトであるためである。そこでプラズマCVD法を採用するが、プ ラズマを使用するために合成時の基板温度が蒸着法等よりも高温になる、イオン等に より基板表面がエッチング、スパッタリングされやすいなどの問題がある。また、水 素プラズマを併用するため、さらに困難としている。

  • ヘテロエピ夕キシャル成長に向く基板が見つかつていない
    格子ミスマッチの小さく、表面エネルギーが大きい、面積が大きくとれる材料がわかっていない。

  • 気相成長の場合、前処理が必要
    ダイヤモンド気相合成法では、簡単にダイヤモンド核は発生しない。これは、基板付近の炭素の過飽和度が低い、アモルファスカーボンが生成してしまい、ダイヤモンド 核が成長できない等の理由による。そこで核発生を促進するためにいくつか前処理が 考案されているが、一般的にこれら前処理は基板表面の荒れを伴う。このためヘテロ エピ夕キシャル成長が困難になり、単結晶薄膜成長を難しくする要因の1つになつて いる。
    しかし、本研究のテーマであるバイアス処理はヘテロエピタキシャル成長を促 進する効果があることが最近わかってきており、注目されている。
    バイアス処理と は、ダイヤモンド合成中に基板側が負になるように直流バイアスを印加する前処理で ある。これにより基板表面の炭素過飽和度を上げる、イオンボンバードメントによる sp2からsp3への相転移を促進する、水素イオンによるアモルファスカーボンの 選択エツチングの促進、等の理由により、核発生密度を飛躍的に増加させることがで きる(さらに詳しいことは後述を参照)。

    以上のような問題点により、ダイヤモンド(特に低圧気相合成)は電子デバイス等への実用化には至っていない。しかし、ダイヤモンドには現在主流のSI等にはない優 れた性質を数多く持っており、実用化された場合社会へのインパクトは計り知れな い。いずれにしても、単結晶ダイヤモンド薄膜作成技術の確立が実用化への第一歩で あり最短の道であろう。


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