このマニュアルは,特定のキーの機能について詳しく説明しています.しかし, Emacsは直接にキーに意味を与えてはいません.その代わり関数に意味を 持たせ,キーと関数を結び付ける(binding)ことによって,キーに意味が 与えられます.
関数は,プログラムとして実行されるLispオブジェクトです.普通,関数定義
はLispシンボルに与えられます.すべてのシンボルには名前が付いています.普
通,名前はnext-line
,forward-line
のようにダッシュでわかれ
ている2,3の英単語からできています.またシンボルにはLispプログラムの
定義もあります.これによって関数は設定された通りの動作をします.い
くつかの関数だけがキーに結び付いています.これらの関数はその定義で関数
interactive
を使って,対話的に呼び出す方法を規定しています.このよ
うな関数をコマンドといい,その名前をコマンド名といいます.こ
れについて詳しいことは,GNU Emacs Lisp Manualに載る予定です(なお,こ
れはまだ作成されていません).
キーと関数の結び付きは,キーマップという表に記録されています. See section キーマップ
"C-nによって垂直方向に1行下がります"という表現では,重要な区別
が見過ごされています.それは,ふだん使うときには関係ありませんが,Emacs
をカスタム化しようとするときにきわめて重要になります.垂直方向に下がるよ
うにプログラムされているのは,next-line
という関数です.C-n
は,この関数と結び付いているので,この効果を持っています.もし,
C-nをforward-word
関数に割り当て直せば,今度は順方向に1単語
だけ動くようになります.キーの割り当ての変更は,もっとも一般的なカスタム
化です.
このマニュアルでは,今後単純にするために,普通はこの違いを無視します.
必要な情報を示すために,その関数を実行するキーを記したあとに,実際に実行
されるコマンドの名称を丸かっこでくくってあります.たとえば,
"C-n(next-line
)というコマンドで,ポイントは垂直方向に下に
移動します."という表現では,next-line
が垂直方向に下に移動すると
いうコマンドで,C-nは標準状態でそれに結び付けられているキーである
ことを示しています.
これまではカスタム化について述べてきたので,ここで変数について述
べることにします.コマンドの説明で,"これを変更するには,
mumble-foo
という変数を設定します"ということがよくあります.変数
というのは,値を記憶するために使われるもののことです.変数はコマンドや
Emacsの他のところから参照され,これに従って動作が変わります.カスタム化
に興味がわくまで,変数についての情報は無視してかまいません.興味があれば,
変数に関する基礎的な資料を読んでください.そうすれば個々の変数に関する情
報が意味をなしてきます(See section 変数).